マスクしてトレッドミル

きのうは通っていたジムをついに退会してきた。たいしたことはないような気がしていたが、なにかを失ったようで、なんだか少し寂しい。

 

とはいえ、ジムに通って知り合いになったトレーナーさんがいるとか、友だちができたとかそういうことではなく、生活における選択肢がひとつ減ってしまったことへの単純な寂寥というのが近いかもしれない。のんきに「寂寥」とかいえるほどには、まだ現状の世界は立ち直る兆しもないのだが。

 

もともと今の家に引っ越したついでに、家から通いやすい距離にあるし、ランニングにおけるパフォーマンスアップのための筋トレ、悪天候時や花粉回避策を狙って入会したのだった。トレッドミルでのランニングは実走とは大きく違うが、代替の動作にはなるし、マシンを使った筋トレも、地味な自重の筋トレよりも楽しくいい気分転換になる。

 

最初の緊急事態宣言下で休館の時期があり、再開してもさすがにすぐには行く気にならず数ヶ月は休会させてもらった。ややコロナが落ち着いてきていた晩夏か秋ごろに、感染防止対策はどのようにされているのか、という興味もあり行ってみることにした。

 

館内ではもちろんマスク着用義務があり、トレッドミルで走る際も外すことはできない。その義務自体、理解するし遵守すべきだが、15分も走ると屋内でマスクをして走るという行為そのものに限界を感じた。屋外のように風は流れないので、マスクが吸う汗は乾かず、昔のバライエティ番組でストッキングを被った上から水をかけられるという演出があったが、まさにそれで、瞬時に呼吸困難に陥りパニックになる当時の芸人のリアクションが決しておおげさなものではなかったということを体で理解した。

 

ジムの感染症対策はしっかりされていたし、ジムも会社としてそこにお金を使わなければならないので、対策がしっかりしていればしっかりしているほど、そして以前よりも人が少なくなった(ように見えた)状態では、なんだかジムというありかた、ハコそのものに対して、「かわいそう」と思ってしまう自分がいた。その時は、今後もなんとか退会せずにいようと思った(通う頻度が減ってもつまり会費を払い続けるということ)。

 

だが昨年末から感染者が増え続ける状況になったことで、さらにジムに行くという選択肢は自分のなかでは完全になくなり、まったく行かないのに会費を払い続けるという失敗をした。さすがに後ろ髪を引かれる思いで退会をしてきた。もちろん自分の場合はトレッドミルが主な目的だったからそうなっただけで、マシンジムや筋トレ、スタジオでのレッスンやワークアウトがメインのひとは、退会せず続けるという選択をする場合が多いのかもしれない。

 

ある場所との関係性が切れてしまうのは寂しい。ひとつ世界が狭くなったような気がする。