読書記録『魔女狩り』(森島恒雄)

魔女狩り (岩波新書)

魔女狩り (岩波新書)

筆者はパスカルの『パンセ』から引いている。
「人間は宗教的信念(Conscience)をもってするときほど。喜び勇んで、徹底的に、悪を行うことはない。」

ここ最近で読んだ本の中では抜群におもしろい(内容的に「おもしろい」というのは語弊があるが)、異端審問についての本。人間が信念を持って(確信をもって)、かつ絶対におのれが正しいと信じて悪を為すことができるということの歴史的な証明。ジェノサイド(ホロコースト)、オウム真理教の一連の事件、アメリカによる対テロ戦争、これらの人間の歴史に禍根を残す悪性は、すべて「正統な」論拠に基づいて「よかれと思って」行われてきた。

この本を読むまでは、魔女狩りって単なる庶民の不安や不満の捌け口、つまりスケープゴートくらいにしか思っていなかったんだが、キリスト教会の権威に裏付けされたひとつの社会システムとして異端審問がなされていた史実は、圧倒的に暗く、恐ろしい。拷問の描写がキツいので、勝手にR-15指定させていただきました。