読書記録『SOSの猿』(伊坂幸太郎)

SOSの猿 (中公文庫)

SOSの猿 (中公文庫)

むー、これはおもしろいんだろうか。なんだかアタマを使い過ぎているというか、世界がつくられ過ぎているようで、あまり落ち着いて読めない。テーマ自体は好き。悪魔祓いのモチーフとか、インドネシアの影絵とか。個人的にはたまたま最近、異端審問、魔女狩、悪魔なんかに興味をもち始めていたので興味深く読んだのだが。うーん、なんだか本書に出てくる「悪」は確かに悪いんだけど。禍々しくないというか、不気味ではないというか、あまり実感を持てない描写だけの「悪」。そこが強くないので、さらっと読めてしまい過ぎて、こころに引っかからない。惜しい。いちぶの読者が離れても、もっと鬼気迫る伊坂幸太郎が読みたい。

 物事を簡単に断定する人間は、ちょっとしたきっかけで、まったく逆の立場にもひっくり返る。
「では、親はどうすればいいんでしょう」と訊ねた私に、ロレンツォの父親は頬を緩ませ、「『子供のことが分からないけど、分かりたい』そう思っているくらいがちょうどいいんじゃないか」と言った。(p.122)