羽根田治さんの山岳遭難ドキュメントは、たまに読むと啓発される。というか気が引き締まる。人間は慣れてしまうもので、自分では注意できているつもりでも、慢心が出てくる。慢心というと、いかにも自信過剰みたいな表現だが、「慣れ」は無意識な慢心だけに厄介だ。意識できていないだけ、危険や危機が目前に迫らないと気づかない。気づいたときにはすでに危機的状況になっている。そういうことを改めて認識させられる。
羽根田さんの遭難モノには、著書ごとに気象遭難、低体温症などそれぞれテーマや切り口があるので自分の興味関心にしたがって読んでみるといいと思う。個人的に一番印象が強いのは、低体温症やツアー登山の切り口で書かれた(共著だが)『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』(ヤマケイ文庫)は、その内容の怖さも含めてハイカー必読。