- 作者: 森敦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/07/06
- メディア: 文庫
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『月山』は森敦の中編である。たまたま本屋で平積みされていたので、夏の帰省のタイミングで山好き、東北出身の自分にはある種、啓示のような出会いと錯覚してもいいくらいの邂逅だ。しかし、内容は山岳小説でもなんでもなく、筆者が滞留した、月山周辺の風土、人々を描いた、なんとも「退屈」といえば、それで終わってしまうような小説である。月山は「死の山」だそうだ。森は、月山周辺の幽玄な世界で、死者と生者との世界を体験する。ただしそこに境界はない。オカルトと読めばそう読めなくもないが、決してそうではない。主観なのか客観なのか、わからない世界観で、その美しさに鳥肌が立った。読んでよかった。