読書記録『ダライ・ラマ 「死の謎」を説く』(ダライ・ラマ)

内容はともかく、なんとも不親切な構成の本だと思う。ノンフィクション作家の大谷幸三氏がダライ・ラマに対し行ったインタビューに基づいているのだが、この本の著者として表紙等に氏の名前は出ていない。それだけでもなんだか騙された気分になるが、本文においても、謎の注釈、解説めいた文が分量にして半分くらい挟み込まれており、いったいこれは誰の文責において書かれているものか混乱する(唯一「まえがき」は氏の名において書かれ、そこでは「解説ではない」とは書いているが)。意図的かどうかはわからないが、単純に不親切で、読者を騙しかねない構成。もちろん、それでも我慢して読んだら心に留めるべきと思った箇所はあった。

あなたがまだ物質的な充足の限界を知らない、信心の限界も、宗教的な献身の限界も、心的世界の限界も知らない、それこそが正しい状態といえるだろう。
(P.110「絶望からの信仰は、正しい態度ではない」)