読書記録『アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由』(山野井泰史)

日本を代表するクライマー・山野井泰史の本。手足の指、計10本を凍傷で失いながらなおも登山を続けるアルピニスト

正直、題名と文面がかみあっていないというか、山野井氏が「死」について真っ向から語っている、という内容ではない(もちろん登山じたい死と隣り合わせで、登山を語ることが死を語ることになるともいえるのだが)。著者本人も、あとがきで「(自分がいかにして生き残ってきたか)具体的な説明はできなかった」と書いている。まあしかし、著者において、慎重さと、そのなかで限界に近づこうとするチャレンジとが同居していることは垣間見れる。

限界状況への渇望から深く考慮せず計画を進めては絶対にいけない。
(p.165)

限界線から一歩踏み出すたびに、生命が躍動した。安住できる土地を離れ、不安や孤独を感じながらも、克服することがより困難で切り立った場所に向かっていった。
(p.182)

過去のクライミングについては『垂直の記憶』(山と渓谷社)により詳細が書かれている。

垂直の記憶 (ヤマケイ文庫)

垂直の記憶 (ヤマケイ文庫)