読書記録『ドキュメント 山小屋とコロナ禍 山小屋の〈未来〉を展望する』(山と溪谷社編)

 

ヤマケイ新書 ドキュメント 山小屋とコロナ禍

ヤマケイ新書 ドキュメント 山小屋とコロナ禍

  • 発売日: 2021/01/07
  • メディア: 新書
 

2020年はコロナウイルスでランニング系のイベントが軒並み中止になってしまったので、「ふつうの登山」をしようと思い、例年よりも山行は多くなったように思う(けっきょく、外出自粛もあり、実際にはおおむね7月から11月くらいしか行けなかったが)。とはいえ、台風による林道の崩壊などもあって、南アルプスの多くの小屋は休業となるなど、行けないあるいは例年よりもかなり行きにくい山域もあった。

 

この本は、コロナ禍における山小屋や山をめぐる関係者が去年(いまも続いているが)どのようにこのパンデミックに対処したかをほぼリアルタイムで伝えてくれている。この本を読んで根本的に重要と思うのは、コロナによりこれまであった山小屋が抱える諸問題が露見したことだ。いや、露見というよりは、われわれ一般の意識の低い登山者にも山小屋という存在がいかに危機に瀕しているかを知らしめた、その問題を見て見ぬふりができなくなった、といったほうが正しい。

 

9月に雲ノ平山荘に宿泊する機会があったのだが、そこのオーナーさんに聞いたのは荷揚げのヘリコプターにまつわる問題だった。ごく簡単にいうとヘリコプター会社のリストラにより、山小屋がヘリコプターを確保することが難しくなってきている、ということだが、これは単にヘリコプターの会社がダメとかそういう単純な話ではない。日本という国が、いかに山や登山という自然環境や文化を守って、持続可能な維持管理をしていくか、という根が深く大きな問題なのだ。

 

登山者にとって、登山できるということがいかにありがたいことかを考えさせられる本。自分もなにかできることはないか。