読書記録『ひとり旅』(吉村昭)

 

 雑誌や会報などに掲載された吉村昭のエッセイや対談を集めた文庫。個別のトピックはそれぞれ作家の作品や人生に対する姿勢について垣間見ることができて興味深い。けっこう内容の反復があって、前に読んだか?というデジャブに陥りがちだが。

 

本のタイトルに「ひとり旅」とあるように、自分の足で地方に赴き取材をして人や資料に出会う話は、さらっと書かれているがけっこうな体力と持続する知的好奇心が必要とされることだ。作家・吉村昭を形成したのはまさにこの事実を追求する執着心だと思うが、強烈な動機というか、そういうものに突き動かされた背景はバランスとして詳細には描かれていない気もする。そのあたりは、氏の小説に当たることでつかめてくるのだろう。