読書記録『アドルフに告ぐ』(手塚治虫)

新装版 アドルフに告ぐ (1) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (1) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (2) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (2) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (3) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (3) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (4) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (4) (文春文庫)

手塚治虫の長編。全4巻。ヒトラー、ドイツ人の父と日本人の母をもつハーフ(カウフマン)、神戸に住むユダヤ人(カミル)、この3人のアドルフを巡る物語。そこに日本人の記者、峠(トーゲ)が絡んでいく。物語の軸はヒトラー出生の秘密。クライマックスはヒトラー死してなお尾を引く負の連鎖。

最終巻の帯に「そして、祈りだけが残った」とある。峠という日本人がこの物語じたいの語り部という設定であり、そこでこの歴史的悲劇は客観性を得るわけだが、語り手もいない、誰も知らない、それぞれの人間の語られぬ物語が過去にはあったのだ。