先週末は電車での移動時間がけっこうあったり、夜眠れなかったりしたので、読書が進みました。しかし、本を読めるだけマシです。本も読めない精神やカラダの状態だったら、いよいよ逃げ場がない。
- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1981/06/29
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戦時下の生体実験で捕虜殺害の現場に居合わせた医師、勝呂(スグロ)の煩悶を中心とし、新宿に生きる人たちの生(と死)を描く。正直、誰も(ふつうの意味で)救われず、赦されない。ただただ、哀しく、そして愛おしい、日常に潜むそれぞれの存在の、それぞれの生。現実には。そんな「愛おしい」なんて、俯瞰してものをみることなんて、できないことだけど。
神の視座、っていうのは慰めの方法論なのだろうか。しかし、それで充分だ。
- 作者: 遠藤周作
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ロドリゴが信徒に裏切られて捕らえられ、拷問を受け、最終的に背教するに至る、クライマックスのモノローグ、ダイアローグ(すでに先にキリスト教を諦めたフェレイラとの)の流れは圧巻。少し長いがよいので引用します。
「では、お前は祈るがいい。あの信徒たちは今、お前などが知らぬ耐えがたい苦痛を味わっているのだ。昨日から。さっきも。今、この時も。なぜ彼等があそこまで苦しまねばならぬのか。それなのにお前は何もしてやれぬ。神も何もせぬではないか」
司祭は狂ったように首をふり、両耳に指をいれた。しかしフェレイラの声、信徒の呻き声はその耳から容赦なく伝わってきた。よしてくれ。よしてくれ。主よ、あなたは今こそ沈黙を破るべきだ。もう黙っていてはいけぬ。あなたが正であり、善きものであり、愛の存在であることを証明し、あなたが厳としていることを、この地上と人間たちに明示するためにも何かを言わねばいけない。
(pp.262-263)