読書記録『金沢城のヒキガエル 競争なき社会に生きる』(奥野良之助)

 

金沢城に生息するヒキガエルの生態を調査した動物モノ。基本的には爬虫・両生類とか昆虫の類は好きなので。どうやって個体識別するか、とか個別のカエルへの愛情とか、それぞれ興味深く、両生類嫌いの方でも読んだらカエルが好きになる(かもしれない)。嫌いな人は永遠に嫌いな傾向があるが。また著者の軽妙な文体もリズムがあって、本全体になんとなく表紙のカエルの表情のようなユーモラスな印象を与えている。

 

ただ、副題にあるように、ダーウィンの進化論とその「競争」原理のバイアスで動物を観察する現代生物学の視点について批判的に描いている点は、内容としては好きではあるがちょっと無理やりな印象がある。

 

まあでも総じて読後に近くの水辺を「カエルでもいないかな」と思って眺めたり、鳴き声に耳を澄ませたりするようになるくらいのいい影響は受けます。