読書記録『浦上四番崩れ 明治政府のキリシタン弾圧』片岡弥吉

 

江戸末期〜明治にかけてのキリスト教徒弾圧について書かれた本。捕縛から棄教の圧力、拷問、島流し、外圧に対応するかたちで取られた「解放」。当時の浦上のキリシタンたちが、島流しを「旅」と表現していたところに、宗教における精神世界の時空に対する認識が垣間見えて、人間の意志の美しさにグッとくるものがある。
 
いままでは通勤時に読書をしていたのだが、在宅勤務が増えると急激に読書量が減る。

読書記録『総員起シ』(吉村昭)

 

 吉村昭の綿密な取材に基づく戦史モノ短編集。少し前に読んだ柳田邦男の『空白の天気図』もそうだが、戦争には多くは語られていない、しかしそれぞれの当事者にとってはひじょうに重要な事件が多数ある。個々のストーリーはそれぞれあまりにも壮絶なのだが、戦争という大きなうねりのなかで、「埋もれて」しまっているのだろう。毎年夏になると戦争関連の本を読むのだが、今回はけっこう沈痛な読書体験。

読書記録6~7月もろもろ(6冊)

とりあえずバス通勤で粛々と読んではいたが、仕事に時間と精神力を割かれ記録につける気力がなく。 まあ、読まないよりは少しマシ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読書記録『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』(廣野由美子)

 

 メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』を紐解きつつ、小説の技法と、小説の批評の切り口を解説していく。

 

それぞれの切り口で見ることの是非というよりも、「文学の批評には〇〇という切り口があって、『フランケンシュタイン』をその切り口で語ると〇〇と読むことができる」という書き方で、勉強になる。「小説の書き方」みたいな本に比べ、書き手としての主観や「気持ち」が排除されているだけに、客観的に「小説」を捉える手引きとなりうると感じた。

読書記録『遠い日の戦争』(吉村昭)

 

 戦争とその終結とのあいだで「正義」が変わる。

 

「戦犯」として追われる、米軍捕虜の殺害に関わった主人公の逃亡・潜伏劇であるが、描かれるのは国家間の戦争と、その大きなうねりのなかで振りまわされたひとりの旧日本軍個人の心象といえる。

 

無差別爆撃による空襲で一般人を「虐殺」した米軍の捕虜を、「正しい」復讐と思って斬首。しかし、捕虜を殺害した主人公は敗戦とともに戦犯に。確信をもって捕虜を処刑したはずが、その確信の根幹が揺らぐ。なんというか紋切り型の人を殺した「良心の呵責」みたいなものがあまり前面に出ていないのが、かえって物語にリアリティを与えている気がする。