読書記録『総員起シ』(吉村昭)

 

 吉村昭の綿密な取材に基づく戦史モノ短編集。少し前に読んだ柳田邦男の『空白の天気図』もそうだが、戦争には多くは語られていない、しかしそれぞれの当事者にとってはひじょうに重要な事件が多数ある。個々のストーリーはそれぞれあまりにも壮絶なのだが、戦争という大きなうねりのなかで、「埋もれて」しまっているのだろう。毎年夏になると戦争関連の本を読むのだが、今回はけっこう沈痛な読書体験。