読書記録 『遺体 -震災、津波の果てに-』(石井光太)

 

遺体―震災、津波の果てに―(新潮文庫)

遺体―震災、津波の果てに―(新潮文庫)

 

10年前、大きな地震の直後に襲った津波。そのとき岩手県の釜石で起きていたことを描く。津波による多くの遺体を前にして、生き残った人たちがどのように状況に対処していたかをインタビューに基づいて構成したノンフィクション。 

 

非現実的なほどの被害の規模と遺体の数にたいし、遺体の尊厳を守りながらあまりにも現実的な対処を迫られた人々。それは、遺体を探す、遺体を安置所に運ぶ、身元特定のための確認、歯科医による検視、火葬の手配、火葬施設のキャパオーバーを受けた土葬の検討、他県の火葬場の協力、そのための県を跨いだ連日の遺体搬送など。それこそ「怒涛」そのものである。

 

10年前に、超現実が現実となった。黙祷。