読書記録『破獄』(吉村昭)

破獄 (新潮文庫)

破獄 (新潮文庫)

4度脱獄した男の話。事実に基づいたフィクション。日米開戦から終戦前後の時代が舞台で、人間の「自由」への渇望が大きなテーマなんじゃないかと思う。その時代背景と、脱獄を繰り返す佐久間清太郎の大胆な破獄、看守たちとの精神的なせめぎ合い。途中、繰り返しが多くて(4度も脱獄してるのだからしょうがないか)やや疲れるが、戦中戦後の緊張感のある世界観が、物語をダレさせることなく進行させる。善悪の彼岸を描く、とても文学的な作品。