読書記録『バイバイ、ブラックバード』(伊坂幸太郎)

(ぶっ飛んだキャラクター設定、伏線、軽妙なダイアローグ、という伊坂幸太郎要素をコンパクトにまとめた小編×5)+1=改めて伊坂ワールド。みたいな構成。星野という男が「あのバス」に連れて行かれる前に、五股の恋人それぞれに別れを告げにいくという物語。太宰治『グッド・バイ』のオマージュ作品らしい。最初はちょっとヒロイン(w?)繭美(星野を「あのバス」で連れて行く側の人間)の、会話がつくり過ぎなんだが、星野との掛け合いができてくる終盤にはそれほど鼻につかなくなる。読者が慣れるのかもしれない。

「わたしが思うにはな、おまえはたぶん、自分のことを過小評価しているんじゃねえか?」
「え」
「勘違いするな。わたしが、おまえを評価しているわけじゃねえぞ。ただ、おまえは自分には大した価値はないと感じている。だからな、たぶん、二股かけたところで、女はそれほどショックを受けない、と心のどこかで思っているんじゃねえか?相手にとって、自分は重要な人物じゃねえと思っているからだ」
「どういうことだ」
「たとえば、高級車や宝石が家からなくなったら大騒ぎだけどな、タオルが一枚なくなっても、それほど問題ではないだろ。おまえは自分をタオルだと認識しているんだよ」
(p.296)