読書記録『氷壁』(井上靖)

氷壁 (新潮文庫)

氷壁 (新潮文庫)

ふつうにおすすめしたいおもしろい小説。前穂高で切れないといわれるナイロンザイルが切れ、遭難した男と、その友だちを巡る青春小説。600ページもあるが一気に読むことができました。

登山家・小坂と魚津、魚津の上司の常盤といった男たちの友情。恋愛。山岳での出来事が舞台の小説ですが、純粋な登山を描いたというよりは、都会と自然、理性的なものと非理性的なもの、合理性と非合理性とが対立(あるいは共存)する世界観を表現していると思う。理性では割り切れない世界、論理では説明しきれない世界(オカルト的なものではなくあくまでも日常的なレベルでの)、そういったものを井上靖が書こうとしているように感じられ、その点が自分の日々の問題意識と重なってかなり興味深かった。