読書記録『単独行』(加藤文太郎)

新編 単独行 (ヤマケイ文庫)

新編 単独行 (ヤマケイ文庫)

帯曰く「孤高の単独行者、加藤文太郎の不朽の名著」。山を登るひとはたいてい読んでいる本なのかな。

この「新編」は加藤の登山記録を古いものから並べていて、かつ周辺人物の述懐も掲載されている。加藤の決してうまいとはいえないが、とても味のある文体がおもしろい。文中にもあるが、文章(すなわち加藤自身)が成熟していく過程が読めること自体、単なる山岳を舞台にした文章というよりは、ひとりの人間の生き様を見る感じで、興味深い本でした。ちなみに編集は違うものの加藤の文章自体は青空文庫にもあるので、ネット上でも無料で読めます。

ちなみに加藤文太郎はいまのぼくと同い年のときに、山で遭難死している。彼の(図らずも)人生の終盤となったころの文章は、とても端正で美しい。単純にものを書くことを愛する者として生意気にも嫉妬を感じました。