読書記録『楡家の人びと』(北杜夫著、新潮文庫)


本日ようやく読了。大正から戦後の時代を中心に、精神病院を営んだ楡家とその周辺を描く人間のドラマ。ながーく淡々と続くテンポは、NHKの朝ドラみたい。

人が病気にかかったり、死んだり、失踪したり、戦争が起きたり、「よくない」ことがたくさん起こる楡家だけど、それぞれのキャラクターが哀愁と表現するに限りなく近いユーモアを匂わせ、悲愴さは感じさせない。ただ、その時代に生きた人びとの息づかいを淡々と描く。人びとの(「嫌いになれない」というくらいの意味で)愛すべき「生」。

ひとを憎んだり、嫌ったり、好きになったり、生きたり、死んだり。そんな情景が、「よい」とか「わるい」とか、そういった価値基準の判断を、どうでもいいものにさせる。

追記:個人的には『ドン・キホーテ』に近い読後感でした。ドン・キホーテよりは笑かしてくれないし、より日本人の感覚に近くはあるのですが、出てくるキャラが憎めないあたりが凄く近い。

楡家の人びと 第一部 (新潮文庫)

楡家の人びと 第一部 (新潮文庫)

楡家の人びと 第二部 (新潮文庫)

楡家の人びと 第二部 (新潮文庫)

楡家の人びと 第三部 (新潮文庫)

楡家の人びと 第三部 (新潮文庫)