雑感 侵食

夏場は暑すぎて火を使った自炊をしないのだが(つまり夏はほぼ自炊そのものをしない)、寒い冬はすすんで自炊する。とりわけさいきんはあまり外食を体が受け付けなくなったし(飲み屋は別だが)、前ほど外出しなくなったので、自炊のほうがラク、ということもある。

冬場は極度に乾燥している。

自炊に限らず、ではあるが、冬場の水仕事は手指を侵す。乾燥と水濡れの繰り返し、洗剤に触れることによって、皮膚は酷使され、角質化、もっと酷くなるとヒビ割れを起こして痛むこともある。学生のころの居酒屋でのバイトでは常に手が荒れていたが、大人になって自炊をするようになったここさいきんの冬の自分の風物詩といえる。

いちばんひどい部位は、利き手である右の小指周辺で、もっといえば小指と薬指の股を中心に、小指、薬指がやられてしまう。しっかり家事をする、というのがさいきんの自分の小さなテーマ、というか、それをしないと生活がいちじるしく乱れることがわかったので、ルーティーンのような、生活におけるメンテナンス的な位置づけで「しっかり」とするようにしている。自分としてはめずらしくまじめに家事をしているためか、その侵食はついに右手の中指まで来てしまった。

仕事などでやむをえず、家事における水仕事の頻度が落ちるタイミングもある。そのときはわかりやすく、手指は快方に向かう。人間の体の修復能力、回復能力、ホメオスタシスっていったっけ?そんな平衡を保とうとする力に驚きを覚える。風邪から回復するときもそう思うが、体がとてもがんばっているような印象をうける。健気なような気がするいっぽうで、全体としての生命というものの力強さのような、自分という「個体」の存在をはるかに超えた、生命というひとつの流れの大きさというか、うねりのような強大さを覚える。

なにかで落ち込んでいるようなときに、そんな弱っちい自分の体に、図らずもその大きな力のようなものを意識する場面に出くわすと、まだだいじょうぶかもしれない、という気にもなる。