読書記録『続・泥流地帯』(三浦綾子)

続 泥流地帯 (新潮文庫)

続 泥流地帯 (新潮文庫)

『泥流地帯』の続編。十勝岳大噴火後の拓一、耕作兄弟を描く。前編よりも非常にキリスト教色の強い物語になっている。噴火時の泥流によって硫黄にまみれた土地に向き合い、ひたすら復興にかける拓一と、そんな土地に手間をかけるなど「税金のムダ」と妨害する復興反対派との対立がストーリー展開の軸。拓一のひたむきさはそのままそっくりキリスト教道徳的な趣を呈するが、そんな拓一に疑問を持ちつつ応援していく弟・耕作の視点を間に入れることで、説教臭さをギリギリで回避している。耕作の自問自答・葛藤はそのまま読者のそれなので、耕作の心理描写を濃密にすることで読者への余計な説明がない。少なくとも自分は最後までしらけることなく読んだ。拓一のように生きてみたいものだと単純に思える。