読書記録『神々の明治維新-神仏分離と廃仏毀釈- 』(安丸良夫)

 

 魔女狩りとかキリシタン弾圧とか、ある(体制とか宗教とか広義の)団体が特定の宗教集団、あるいはそれに反する存在に攻撃加え、廃絶しようとするような歴史的事象には、なぜか惹きつけられるものがある。様々な形態や考えかたはあるにせよ、少なくとも表面的には人間を救済すべく存在するはずの宗教が、排他的にほかのものを抹殺しようとする。その「異様さ」が、こころをつかんで離さないのかもしれない。

 

神仏分離廃仏毀釈はさらっと教科書で触れられるだけで、現代の日本人にはあまり深く話されるトピックではないかもしれない。神道も仏教も、なんとなく現代でも生きながらえていて、なんとなく「無かったこと」になっているのだろうか。この明治維新の時期に破壊され打ち捨てられた仏像や仏教建築などは、こんにちの我々が想像するよりもたくさん存在したのかもしれない。神社仏閣、仏像などは日本の「伝統」「文化」の象徴とされ、確かにそうであるが、ほんらいはそういう静的なイメージというよりももっと緊張をはらんだものの象徴といえるだろうし、そのような視点に立つことで、ダイナミックに歴史を捉えることができると感じた。