読書記録『聖の青春』(大崎善生)

 

聖の青春 (角川文庫)

聖の青春 (角川文庫)

 

 早逝の棋士村山聖を描くノンフィクション。松山ケンイチ主演の映画は以前観たが、原作のこちらは初読。

 

なんというか、ひとつのことに自分の全存在をかけることの凄まじさを見せつけられ、読後ちょっと呆然としてしまう。将棋に命を賭すのは「狂気」なのかもしれないが、じゃあ「正気」ってなんだろう。どちらかの立場からどちらを一方的に批判したところで、どちらが勝ちとかそういう問題ではなく(そういう問題をゆうに超えて)、おのれのなかに存在する相反するものとどう折り合いをつけていくのか、という課題は常にある。命をかけてそこに挑む村山聖の姿に、正邪を超えた美しさすら覚える。