読書記録『西南シルクロードは密林に消える 』(高野秀行)

 

 再読。角幡唯介氏が人生を変えた一冊と言っていたので。ちなみに彼らは早稲田大学探検部の先輩・後輩の関係。前回は2019年に読んでいる。

 

中国の成都からビルマ(ミャンマー)を通ってインドに抜ける「西南シルクロード」をゲリラとともに旅する珍道中。珍道中と書いてしまうと語弊がある。というのもこれは違法行為であり、中国の官憲に尋問を受けたり、捕まりそうになったりするかなりのシリアスな旅で、しかも密林を歩くという違法でなくても大冒険である。それでも珍道中と書いてしまうのは、軽妙な高野文体のなせるわざだし、このコミカルさこそ氏の著書の醍醐味と思う。

 

とくに人物の描きかたが秀逸で、どうしてここまで母語の異なるひとたちと深いコミュニケーションができるのかと舌を巻く。現場における言語能力が凄まじいと勝手に思う。あと、それを可能にする観察力と、人間に対する懐の広さ(偏見のなさ)が、この本を生み出しているのだろう。10代の頃に読んでみたかった本(その時はまだ存在しない本だったが)。

 

いまのビルマの惨状を高野氏はどうみているのだろうか。