なぜが強烈に引きつけられ、逃れられなくなるドストエフスキーの小説。とりあえず、『ドン・キホーテ』(セルバンテス)とドストエフスキーを読んでいれば、生きている時間のうちの退屈な時間の大半を楽しくすることができると最近は思う。
米原万里の『打ちのめされるようなすごい本』で紹介されていた『ドストエフスキーの詩学』(バフチン)はドストエフスキー著作の芸術論。通勤のバスのときだけで、時間がかかってようやく読了。
個々の作品の解説本(という要素もあるが)というよりはむしろ、ドストエフスキーの芸術観や、創作に対する姿勢を分析しているもので、作者や登場人物の思想的な枝葉末節とかイデオローグ的側面などにとらわれず、全体を俯瞰するような芸術論が展開されている。「ポリフォニー小説」とか「カーニバル文学」などの、バフチンの定義づけはやや唐突で最初は面食らうが、慣れる。ちなみに「カーニバル文学」の一例としては『ドン・キホーテ』も言及されている。